新実徳英　生きることが音楽！

東日本大震災から数ヶ月経った頃、合唱を愛する者達が集まって今後の義捐金募金活動の話をしていた席で「募金は勿論大切だけれど、一番大切なのは心を寄せていること」と説いたのが新実氏だった。
和合亮一氏の発信する詩に付曲を続け自らその「つぶてソング」をワイン片手に歌う動画を撮影されてYou Tube配信もされた新実氏。
不要不急どころか“生きることが音楽！”の生き方を決して力むことなくし続ける天才秀才奇妙奇天烈な作曲家「新実徳英が出来た訳」がこの一冊で明らかにされる。

この本には、「新実徳英の音楽」が生まれる背景が詰まっています。音楽を作曲するのも演奏するのも人間ですから、行動や思索などが、どのような経緯で現在のありようになったのかを知ることは、その音楽に近づく手立てになり得ます。
自在な展開と、ユーモアと優しさに溢れたお人柄そのままの魅力ある文体で、「新実の世界」へ導かれます。そこには、隠しようのない知性と教養が惜しげもなく表れ、繰り返し読むたびに新たな発見があります。私は、40年以上（必ずお酒を呑みながら）話をしていただく機会に恵まれ、《白いうた 青いうた》と歩む旅も30年を超えましたが、新実作品が出来上がる前・成立の時・その演奏との関りを、美しい文章で読むことは、今まで新実さんが生きてきた軌跡を知ることになり、同じ時代を生きて（=音楽して）いることの幸せを実感します。