待望の日本語版上梓!
H.リリング著「メサイア」~理解と演奏のためのスタディ・ガイド
「メサイア」―理解と演奏のためのスタディ・ガイド
パナムジカコード:SYPM05
作編曲者:H.リリング/菅野弘久
出版社:パナムジカ
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世界的指揮者で教育者でもあるヘルムート・リリングが、その豊富な経験から得たすべてを後進に伝えようと試みた渾身の著書、「メサイア」に待望の日本語版が誕生しました!
”「メサイア」~理解と演奏のためのスタディ・ガイド”は、音楽史上に燦然と輝く不朽の名作ヘンデルの《メサイア》について、その作品の理解と、演奏に関わる重要なポイントをリリングが余すことなく解説したもので、「楽曲解説」、「暗譜」、「練習方法」で構成されています。
2015年に英語版がまず出版され、ドイツ語版、韓国語版と続き、そして今回の日本語版の出版となりました。
多くのページが割かれている「楽曲解説」の章では、全体の概論と、全48曲が同一の規準(構成、編成、テンポ、デュナーミク、アーティキュレーション、装飾音、意義)で検証されています。そのことによって読者は、芸術を判断し、評価するときの拠り所となるアナリーゼの仕方を学び、その過程で、リリングとヘンデルの時空を超えた対話にも触れることもできるでしょう。
「暗譜」の章では、暗譜主義者として知られるリリングが、暗譜をして指揮をすることの意義とその方法を譜例を使って具体的に紹介しています。
「練習」の章では、《メサイア》の効率的なリハーサルの手順が示されます。
これらのすべては、《メサイア》のみならず、他のオラトリオ作品の演奏にも大いに役立つにものばかりです。
しかしリリングはここで読者にヒントを与えたに過ぎません。
リリングがこの本を通してもっとも伝えたかったことは、楽譜から音楽を作り出すときの疑問に、自分自身で答えを見つけることの大切さなのです。
指揮者、合唱指揮者、独唱者、オーケストラ奏者、合唱団員、そして…、このヘンデルの傑作を愛するすべての人々に手渡しされたリリングからの贈り物というべきこの一冊。ぜひともその手にお受け取りください。
日本語版は、ドイツ・カールス社の協力のもと、ベストセラー「合唱と独唱のための《ヴォーカル・ウォームアップ200》」の翻訳者でもある菅野弘久氏が日本語訳を、またリリングの直弟子であり、指揮者の本山秀毅氏が監修をそれぞれ担当しました。
本文 はじめに より抜粋
ヘンデルの《メサイア》を論じた本書には、指揮者として、また教育者として卓越したリリングのスキルがあふれています。
指揮者と演奏者にとっては、まさに〈スタディ・ガイド〉であり、演奏の準備にあたるリリングの思考の過程が順を追って明らかにされています。
そして、その方法論は《メサイア》以外にも活かせるはずです。さらに重要な点は、リリングが読者に対して、ヘンデルの思考を探り、この傑作の深奥に重ねられた意味を、より効果的に伝える方法を考えるよう求めていることです。
H・ロイス・サルツマン (オレゴン・バッハ・フェスティバル名誉音楽監督)
翻訳者あとがき より抜粋
《メサイア》について思索を深めることは精神的な旅に出ること − ヘルムート・リリングは、《メサイア》と対峙するときの心構えを、このように表現します。
本書を読み終えたときに、すなわちその〈精神的な旅〉から舞い戻るときに、私たちの《メサイア》についての認識の地平は、たしかに大きく広がったと実感できるのではないでしょうか。
菅野 弘久
監修者の言葉 より抜粋
その原稿を前に彼の思考に向き合う度に深く感銘を受けるのは、彼が楽曲を通して作曲家の思考や意図を探り、まさに時空を超えた「対話」を図ろうとしている点である。彼の楽曲分析に接すると、作品が決して無機的な音の羅列ではなく、作曲家が歓喜に溢れ、あるいは涙しつつ、また神に感謝しながら作曲に対峙した情景を思い浮かべることが出来る。それは学ぶ者に、楽曲との距離を縮めさせ、メッセージを共有させ、そして発信する意欲を高揚させる。
本山 秀毅