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第1回 日本国際合唱作曲コンクール(ICCC Japan 2015):結果発表


新たな合唱音楽のレパートリーの発信と、合唱音楽の更なる普及を目的とした、日本発の新しいコンクール「第1回日本国際合唱作曲コンクール(ICCC Japan2015) 」(主催: 東京合唱アライアンス"耕友会"、協賛: 株式会社 パナムジカ)の最終審査結果が発表されました。

世界27カ国から応募があった85作品を、ブスト、ミシュキニス、モチュニク、パミントゥアン、そして松下耕という合唱音楽を知り尽くした豪華メンバーが審査しました。

当初は、第1位もしくは第2位までが出版される予定でしたが、大変レベルが高く第3位までが出版されることとなりました。これらの作品が、日本のみならず世界中の合唱団の新たなレパートリーとなりましたら幸いです。

この度、審査員の一人であり初演指揮者でもある松下耕先生より各曲のコメントをいただきましたので、そちらも合わせてご紹介いたします。


記念すべき第1回日本国際合唱作曲コンクールの入賞作品が先日、軽井沢国際合唱フェスティバルで初演された。実に様々なスタイルで書かれた27ヵ国、85作品の応募の中から選ばれた上位3作品は、保守的で美しい、合唱の響きを知り尽くした作品が選ばれた。これは、審査員が合唱を熟知しているため、いたずらに先鋭的な作品、実験的な作品より、声の持つ音響性を十分に活かせる作品が好まれた結果だと思う。
(松下 耕)

※発表の模様のダイジェスト版は ( youtube ) こちらでご覧いただけます。

Ave Maria on the Enigmatic Scale<

Ave Maria on the Enigmatic Scale

軽井沢国際合唱フェスティバル2015 での演奏フルバージョン
作曲者:DE GIACOMETTI, Raffaele (イタリア 1988~)
出版社:Pana Musica
パナムジカコード:GD2303
声部:SATB
伴奏:無伴奏
言語:ラテン語
時間:5分00秒
単価(税込) 432円
「Ave Maria on the Enigmatic Scale」は、“謎の音階”と呼ばれる、長調と短調の性質を合わせもつ音階が生み出す新鮮な響きに包まれる作品です。 この音階は1888年アドルフォ・クレシェンティーニが発表したもので、翌年ヴェルディが「聖歌四篇」の第1曲「Ave Maria」に用いたことで知られています。 ともすれば聴き馴染みのない音として違和感が生じるところを、作曲者は5度の響きを大切にすることで解消し、この音階の内に潜む豊かさの表現に成功しました。ホモフォニ−とポリフォニーを絶妙に取り入れるなど、見事なバランス感覚で成立している音楽です。


今回のコンクールで1位に輝いたこの作品は、イタリア人ラファエレ・デ・ジャコメッティの作曲。 謎の音階によるアヴェ・マリアと題されたこの曲の題名は、ジュゼッペ・ヴェルディの「Ave Maria」を彷彿とさせる。 作曲者自身が自らの曲の構成を「謎」と標榜することに違和感を感じる方もいようが、実はこの曲に使われている音階は、ヴェルディが「Ave Maria」に使用し た音階そのもの(冒頭に出てくるC音からの音階は、ヴェルディのそれの逆行形、後半に出てくるF音からの音階は、ヴェルディと順行)である。 同じイタリアの大作曲家へのオマージュと取れるが、彼の作品はヴェルディ音階の上に確たる(そして美しい)モチーフが提示、展開され、見事な独自の世界を構築している。他人のモチーフを使った単なる習作ではない、その見事な筆致をご覧いただきたいと思う。
(松下 耕)


【作曲者プロフィール】
ラファエレ・デ・ジャコメッティ(Raffaele De Giacometti)
1988年イタリア出身。北イタリア・フェルトレのF. サンディ音楽学校ピアノ科で学んだ後、2004年ヴェネト音楽院“アゴスティーノ・ステッファーニ”へ入学。 マリオ・パゴット、ニコラ・ストラッフェリーニに作曲を師事し、2013年、優秀な成績を修め卒業。デイヴィッド・ラング、ファブリツィオ・デ・ロッシ・レ、エドソン・ザンプロニャ等国際的に活躍している作曲家によるマスタークラス受講。 第1回日本国際合唱コンペティション第1位、第1回ジャン・シベリウス国際作曲コンペティション決勝進出、第3回アントン・ドヴォルジャーク作曲コンペティション・ジュニア部門第1位、グイド・国際作曲コンクール第3位等、受賞暦多数。 作曲のみならず編曲の分野においても活躍。主な編曲活動として、ヴェーベルン作曲「パッサカリア」ピアノ6手連弾編曲(ポルトガル国際フェスティバル)、プロコフィエフ作曲「三つのオレンジへの恋」より「行進曲」オーケストラ編曲(ポルトガル・ユース・オーケストラ“聖セシリア”)が挙げられる。 2009年イタリア・ペダヴェーナのスコラ・カントールム音楽監督に就任。2015年9月より英国王立スコットランド音楽院指揮科修士課程を受講の予定。



Tota Pulchra

Tota Pulchra

軽井沢国際合唱フェスティバル2015 での演奏フルバージョン
作曲者:MAGISTRALI, Matteo (イタリア 1980~)
出版社:Pana Musica
パナムジカコード:GM1150A
声部:SSATBB div.
伴奏:無伴奏
言語:ラテン語
時間:3分45秒
単価(税込) 540円
「Tota Pulchra」は聖母マリアへの清らかな信仰心が感じられる作品です。冒頭女声と男声が純真なハーモニーを交互に歌ったのち、転調して全体で大きな波を作ります。テンポを少し速めた音楽で不安や心配が生まれますが、マリア様の慈悲と荘厳な輝きにより救われ、再び冒頭の美しさを取りもどして曲は幕を閉じます。


イタリア人マッテオ・マジストラーリの作品。この作品はコンサバティブな色合いを持つもので、女声3部、男声3部の計6声に分割されたパートが奏でる音はテンションが高く、美しいものである。テンポの変化、転調により、場面転換が多いこの曲だが、一曲を通した全体像はとてもよくまとめられており、違和感はない。中間部のFis durの美しさは、特筆すべきものである。
(松下 耕)


【作曲者プロフィール】
マッテオ・マジストラーリ(Matteo Magistrali)
1980年北イタリア、ヴァレーゼ出身。2014年コモのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院作曲科にて主席で学位を修得。合唱のみならず多様な編成の楽曲を手がけ、ルイジ・ノーノ国際作曲賞受賞、ダヴィデ・マリア・トゥロルド国際コンクール第2位(1位該当なし)獲得等の成績を残す。 また、トヌ・カリユステ、フリーダー・ベルニウス等による指揮者・歌手のためのマスター・クラスへの参加等、作曲にとどまらず幅広い分野で意欲的に活動。合唱団員およびソリストとして、ディエゴ・ファソリス、ロベルト・バルコーニと共演も果たしている。2014年9月より、ミラノのダラコペン合唱団、ヴァレーゼのピエーヴェ・デル・ゼプリオ合唱団を指揮。



Agnus Dei

Agnus Dei

軽井沢国際合唱フェスティバル2015 での演奏フルバージョン
作曲者:ARTLEY, Chris (ニュージーランド 1963~)
出版社:Pana Musica
パナムジカコード:GA4650A
声部:SATBB
伴奏:無伴奏(リハーサル用伴奏付)
言語:ラテン語
時間:4分30秒
単価(税込) 540円
「Agnus Dei」は冒頭から静かに奏でられる旋律の美しさに心奪われることでしょう。ジャズコードを感じさせるみずみずしい和音に支えられた音楽は、中間部で一転、トーン・クラスターを伴って鋭い光が到来、リディア旋法による激情的な合唱へ。8声による高らかなハーモニーで絶頂を迎え、再び冒頭の美しい響きに回帰する、静と動の対比が魅力的な三部形式の作品です。


ニュージーランドの作曲家、クリス・アートリーによるこの曲も、大変に保守的な手法により、 オーセンティックな混声合唱の美しさを見事に描き出している。その音世界は、近代フランスの作曲家−ラヴェルやドビュッシーら−の印象主義を彷彿とさせるものであり、確たる美しい旋律を、美しい和声が支えている。演奏難易度もそれほど高くないので、多くの合唱団に愛される曲となろう。
(松下 耕)


【作曲者プロフィール】
クリス・アートリー(Chris Artley)
1963年イングランド北部リーズ出身。 英国のブリストル音楽学校およびニュージーランドのオークランド大学にて学んだ後、25年にもわたり英国、ニュージーランド両国の音楽学校にて教鞭を執っている。作曲家としてはこれまでに第12回チェコ・イフラヴァ国際作曲コンクールや2013年度北米ルーテル・ユース・クワイア国際作曲コンクール等において6つの賞を獲得。なかでも彼の作品のひとつ「Psalm 121」は、元キングス・シンガーズのメンバー、ブライアン・ケイにより「最も美しい作品のひとつ」と絶賛された。 現在キングス・カレッジにて教壇に立ちながら、ニュージーランドのザ・グラデュエイト合唱団およびニュージーランド・ミュージック・センター(SOUNZ)所属。 英国・ニュージーランド両国で活発な活動を続けている。


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【初演データ】
初演:2015年8月22日 軽井沢大賀ホール
  《軽井沢国際合唱フェスティバル2015》
指揮:松下 耕
合唱:The Metropolitan Chorus of Tokyo


ICCC公式サイト 公式サイト(http://icccj.org/jp/)

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