ベーレンライターの新刊

ハイドン「天地創造 (Die Schopfung)」

ハイドン「天地創造 (Die Schopfung)」

2009年は、作曲家の記念イヤーとしてハイドン(没後200年)、ヘンデル(没後250年)、メンデルスゾーン(生誕200年)が該当し、これまでにも各出版社から記念する楽譜の出版が相次ぎましたが、いよいよ注目のハイドン作曲《天地創造》がベーレンライターから出版されました。

ハイドンが晩年、ヘンデルのオラトリオに感銘を受け、みずからも2つの作品《天地創造》および《四季》を作曲したことはよく知られています。

特に《メサイア》とのつながりは深く、1791年にロンドンのヘンデル記念祭で、大編成で演奏された《メサイア》を鑑賞したことが、オラトリオ《天地創造》作曲の直接のきっかけになっています。友人の音楽家に、「このような作品を作曲したい」と漏らしたほどで、ほどなくして、ロンドンの興行主ペーター・ザロモンから《天地創造》英語台本を受け取っています。

この台本は、聖書の『創世記』やミルトンの『失楽園』をはじめとする英国の古典をもとに書かれていますが、その作者とされるリドリーという人物については現在もなお不明で、オリジナル台本自体も失われてしまっています。ところが近年、この台本が、《メサイア》の台本作家ジェネンスの手によるもので、それも、もともとヘンデルのために創作されたという研究が発表されました。それが事実だとすると、ますますヘンデルとの繋がりが強調されるようになるでしょう。

そのヘンデルとハイドンの2人が、奇しくも今年、同時に記念イヤーを迎えたということは、とても興味深いところです。

ファン・スヴィーテンが台本をドイツ語に訳しましたが、どの程度オリジナルに忠実な訳だったか、現在では確かめることができません。彼はまた、ハイドンが音楽をつけたのち、音楽に合わせて歌詞を英語に訳しなおしています。

《天地創造》は1798年に初演され、翌年に一般公開されましたが、同年、ハイドンはみずからスコアを出版することを決断しました。彫版まで作曲家自身がていねいに校正をおこない、ドイツ語・英語の2ヶ国語テキストで1800年に出版された楽譜の初版500部は、予約で完売されました。またハイドンは、ピアノリダク ション版も、みずから編曲、出版する計画を持っていましたが、ピアノ2台では自分が狙った音の効果がじゅうぶんに発揮できないとして、最終的に計画を断念しています。

ただ、当時のウィーン上流階級では、管・弦楽器は女性が演奏するものではないとされており、4手のためのピアノ編曲版は、非常に需要が高かったのです。そのことからハイドンは、他作曲家による編曲および出版に許可を与え、数多くのピアノ編曲版が出版されています。ハイドンはその中でも、アウグスト・エバーハルト・ミュラーの編曲版を絶賛しています。

《天地創造》の自筆譜は、ドイツ語の台本を書いたファン・スヴィーテンが所有していましたが、彼の死後行方がわかっていません。初演に使われたパート譜および、ハイドンの使用した指揮譜は残存しており、これら演奏譜が、自筆譜と強く結びついていることは容易に想像できます。ハイドン自身によって企画・出版された初版楽譜には、ドイツ語・英語2ヶ国語の歌詞が掲載されていますが、作曲家本人が校正を繰り返した彫版見本も、資料としての価値が非常に高いものです。ミュンヘンのヘンレ社から出版されている「ヨゼフ・ハイドン全集」の《天地創造》は、それらの資料の研究結果を反映したものとして、世界中から高い信頼を得ています。

今回ご紹介差し上げる、ベーレンライター原典版《天地創造》(フルスコアおよびヴォーカル・スコア)は、現在世界中で出版されている楽譜のなかで唯一、その《ハイドン全集》をもとにした実用楽譜です。ハイドン全集で校訂を行ったアンネッテ・オッパーマンが、引き続き校訂を担当しています。

全集から変更があったのはテキストで、現代のドイツ正書法による表記に改められています。また、英語歌詞を歌いやすくするために、ハイドン自身がメロディーに音符を追加していますが、その音符を小さくし、演奏者が理解しやすい譜面作りを心がけています。またピアノリダクションは、ハイドン自身が「わかりやすく、簡素で、すべての編曲のなかで最良」と賞賛したアウグスト・エバーハルト・ミュラー版をもとにして、手を加えたものです。

なお、校訂者オッパーマンは解説の中で、ハイドンがみずから上演した形に近づけるため以下のような助言も行っています:

1. 当時の上演形態では、ソリストは3人のみでコーラス部分にも参加していたことが明らかにされているので、現代に見られる4人または5人(アダムおよびエファ)のソリストを使った上演とは異なっている。
2.ソロパートは伝統的に装飾音を入れて歌われることが多いが、ハイドン自身は控えめで、楽譜に忠実な歌唱を望んでいる(4bと7bでは、作曲者自身が意図してソプラノに装飾音を書き込んでいる)。

ハイドンの意図が最新の研究によって最大限反映され、なおかつ演奏者の利便性も考慮されたこのベーレンライター原典版《天地創造》は、今後のグローバル・スタンダードとなるに違いない、まさに決定版と言えるでしょう。

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ハイドン「Die Schopfung (天地創造)」ヴォーカル・スコア
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出版社 Barenreiter
作曲者 HAYDN, Joseph (オーストリア 1732-1809)
ピアノ伴奏編曲 MULLER, August E. / KOHS, Andreas
パナムジカコード GH1314B
声部 STB soli & SATB
伴奏 オーケストラ伴奏(この楽譜はピアノ伴奏によるヴォーカルスコアです)
言語 ドイツ語 (副言語 英語)

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ヘンデル没後250年記念商品「メサイア自筆譜ファクシミリ・スコア」

ヘンデル没後250年記念商品「メサイア自筆譜ファクシミリ・スコア」

2009年のヘンデル没後250年を記念して出版された「メサイア」ファクシミリ・スコアです。
キリストの降誕、受難、復活を描いたオラトリオ「メサイア」は、ヘンデルの代表作であるばかりでなく、 古今のオラトリオの最高傑作として世界中の人々に親しまれてきたことはいまさら説明の必要もないでしょう。
今回ご紹介差し上げるこの「メサイア自筆譜ファクシミリ・スコア」は、ロンドンの大英図書館所蔵の自筆スコアを、ドイツの出版社ベーレンライター社が、大英図書館との共同作業により完成させた、まさにメモリアル・イヤーに出版されるにふさわしい一品です。
これまでもJ.S.バッハの「ロ短調ミサ」やモーツァルトの「ジュピター」などのファクシミリ版を世に送り出し、高い評価を得てきたベーレンライターなればこそ、世界有数の研究図書館である大英図書館のパートナーに指名されたことは必然だったといえるでしょう。

作曲家自身が書き残した「自筆譜」は、作品の最初の姿を知ることができるだけでなく、そこに書かれたメモやスケッチ、修正の跡などからその作品が完成するまでの過程を垣間見ることができる大変貴重なものです。その「自筆譜」を忠実にコピー印刷した「ファクシミリ」は、研究者はもちろんのこと、一般の音楽愛好家にとっても、その作品が作られた当時に思いを馳せ、音楽史の浪漫に触れることができる、そんな魅力に溢れています。
また、酸化して紙を腐食させてしまう没食子インクで書かれているために残念ながら劣化が避けられない「自筆譜」の姿を後世まで末永く残すという意味でも大変意義深いものです。

ベーレンライターの高い技術により、複雑な修正箇所やインクの濃淡をも余すことなく再現した本編ファクシミリのほか、ヘンデル研究の第一人者ドナルド・バロウズによる解説(英語・ドイツ語・日本語)、そして、フィッツウィリアム博物館所蔵のスケッチまでを収録、ファンの心をくすぐる格調高い装丁で仕上げた「メサイア自筆譜ファクシミリスコア」。
この特別な一品をこの特別な年の記念に如何でしょうか?

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G.F.ヘンデル:メサイア自筆譜ファクシミリ・スコア
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出版社 Barenreiter
パナムジカコード GH0510A
装丁 ハードカバー(半リネン装)
ファクシミリ 284 + 2ページ、解説48ページ
解説言語 ドイツ語、英語、日本語
特別価格 75,800円

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ハイドン「四季 (Die Jahreszeiten)」

ハイドン「四季 (Die Jahreszeiten)」

大成功に終わった「天地創造」の初演の直後に書かれた「四季」は長い間、「天地創造」の影に隠れて目立たない存在でしたが、素朴な農民の四季の生活を通じて、自然と人間、そして神への賛美が歌い上げられるこの"世俗オラトリオ"は、崇高なオラトリオよりも親しみやすい作品として、現在ではハイドンの数ある作品の中でも特に人気の高いレパートリーとなっています。
今回ベーレンライター社が、ハイドンの没後200年に当たる2009年に照準を合わせ、満を持して出版したこの新しいヴォーカル・スコアは、ヘンレ社の「ヨーゼフ・ハイドン全集」に基づいて編纂された原典版で、最新の学術的研究結果が反映された「四季」の決定版とも言うべきものです。
オリジナルのドイツ語歌詞に加えて、英語とフランス語の現代語歌詞が副言語として付けられいるので意味もつかみやすく、また歌い手にやさしい、クリアで見やすいレイアウトや、考え抜かれたページ割りも魅力です。
オーケストラスコア、パート譜も今後発売が予定されておりますので、ハイドン・イヤーの今年「四季」の演奏をご検討の方は、是非この新しい原典版をご使用楽譜の候補にお加えください。

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ハイドン「四季 (Die Jahreszeiten)」ヴォーカル・スコア
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出版社 Barenreiter
作曲者 HAYDN, Joseph (オーストリア 1732-1809)
編纂者 RAAB, Armin
ピアノ伴奏編曲 MULLER, August E. / KOHS, Andreas
パナムジカコード GH1313C
声部 STB soli & SATB
伴奏 オーケストラ伴奏(この楽譜はピアノ伴奏によるヴォーカルスコアです)
言語 ドイツ語 (副言語 英語、フランス語)

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メンデルスゾーン「聖パウロ (Paulus)」

メンデルスゾーン「聖パウロ (Paulus)」

オラトリオ「聖パウロ」は、後に作曲された「エリア」ともども、19世紀に衰退しかけていてた「オラトリオ」というジャンルに、再び光を当てる役割を果たしたという意味で音楽史上重要な作品の一つといえるでしょう。
今回ご紹介差し上げるこのベーレンライター社・原典版は、メンデルスゾーン研究の第一人者として国際的に知られるジョン・マイケル・クーパーが、あらゆる資料をもとに編纂した「聖パウロ」の新しいヴォーカル・スコアです。
通常演奏されるヴァージョンに加えて、初演後削除されていた作品も収録するなど、この作品の歴史的背景や、新しい演奏の可能性も示しています。

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メンデルスゾーン「聖パウロ (Paulus)」
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出版社 Barenreiter
作曲者 MENDELSSOHN Bartholody, Felix (ドイツ 1809~1847)
編纂者 COOPER, John Michael
ピアノ伴奏編曲 MENDELSSOHN Bartholody, Felix / KOHS, Andreas
パナムジカコード GM4909D
声部 SATTB soli & SATB
伴奏 オーケストラ伴奏(この楽譜はピアノ伴奏によるヴォーカルスコアです)
言語 ドイツ語 (副言語 英語)

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ペルゴレージ「聖母マリアの夕べの祈り (Vespro della Beata Vergine)」

ペルゴレージ「聖母マリアの夕べの祈り (Vespro della Beata Vergine)」

わずか26歳で夭逝したペルゴレージが、ナポリの音楽院を卒業したばかりの時期 に書かれた、若々しく、エネルギッシュな作品を、音楽学者マルコム・ブルーノが、「聖母マリアの夕べの祈り」という大作に再構成したものです。
賛歌、マニフィカト、いくつかの器楽断章、世俗カンタータなどを用いたこの作品は、ヴィヴァルディ風の初期のコンフィテボールから、有名なスターバト・マーテルを連想させる晩年のサルヴェ・レジナまで、ペルゴレージの音楽的多様性と技法上の発展が凝縮されていて、ナポリ楽派からバロックへの橋渡しとして、ペルゴレージが音楽史上きわめて重要な位置にいることを実感させます。

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ペルゴレージ「聖母マリアの夕べの祈り (Vespro della Beata Vergine)」
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出版社 Barenreiter
作曲者 PERGOLESI, Giovanni (イタリア 1710~1736)
編纂者 BRUNO, Malcolm
ピアノ伴奏編曲 BRUNO, Malcolm
パナムジカコード GP4003
声部 SSATB soli & SSATB
伴奏 オーケストラ伴奏(この楽譜はピアノ伴奏によるヴォーカルスコアです)
言語 ラテン語

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