またまたこれから日本で人気を集めそうな作曲家が登場しました!
ジョン・オウガスト・パミントゥアンはフィリピン・マニラ出身で、フィリピン・マドリガル・シンガーズ、アテネオ・シンガーズなどフィリピンを代表する合唱団や、欧米の合唱団にも広くその作品を提供し、彼の作品を演奏する合唱団が、国際合唱コンクールで優秀な成績を修め、また本年のフランス・トゥールズの国際合唱コンクールでは新曲賞を受賞するなど、今後世界的な活躍が期待される作曲家です。日本でも今年1月に「Gaia Philharmonic Choir」(指揮 松下耕)他2団体によって彼の作品が世界初演されたほか、来る8月30日に行われる「はもーるKOBE」(指揮 岸本雅弘)の演奏会でも彼の作品が演奏される予定になっています。今回ご紹介差し上げる「Maior caritas Op.5」は、14曲で構成される宗教的合唱組曲で、言語にはラテン語のほか、スペイン語、フィリピン語が、伴奏には、一部チェロやギターが用いられています。全曲を通して演奏すると50分近くなるという大作ですが、それぞれの作品は単独でも演奏することができ、実際に、第1曲目の「Pater noster」は、「フィリピン・マドリガル・シンガーズ」によって、2007年のイタリア・アレッツォでのヨ国際合唱コンクール・ヨーロッパ・グランプリ大会で演奏され、グランプリを獲得したりしています。
今回スロヴェニアの出版社から彼の作品が出版されることになったのも、彼が世界の合唱界から注目されている証といえるでしょう。実はまだ全曲の出版がされておらず、今回は半分の7曲のみとなりますが、他の曲も出版され次第随時ご案内差し上げますのでお楽しみにお待ちください。またCDも来週ご本人が弊社まで持参くださるということですので、次の機会にご紹介できると思います。こちらも今しばらくお待ちください。
なお、彼の作品にほれ込み、今度の演奏会でも新作を委嘱するなど、作曲者とも親交の深い「はもーるKOBE」の指揮者・岸本雅弘さんより"熱い"メッセージを頂戴いたしましたので、あわせてご案内させていただきます。
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ジョン・オウガスト・パミントゥアン(John August Pamintuan)は、1972年生まれのフィリピン在住の作曲家・合唱指揮者です。37歳で150曲以上の作品を作曲し、今年のフランス・トゥールズの国際コンクールでは、スペイン・バスクの女声合唱団ボカリア・タルデアが彼の作品を歌い新曲賞を受賞するなど、世界各地の合唱団でその作品が演奏されています。あわせて、フィリピンのパラワン児童合唱団、アテネオ大学グリークラブのほか、米国滞在中には今夏来日したニューヨーク市・ヤングピープルズ・コーラスの指揮者も務めています。ハビエル・ブストー、ヴィタウタス・ミシュキニスとも親交があるなど、今後、ユニバーサルな活躍が大いに期待されます。
はじめて、私がパミントゥアン氏の名前を知ったのは、2007年のイタリア・アレッツォでの国際合唱コンクール・ヨーロッパ・グランプリ大会でのフィリピン・マドリガル・シンガーズの演奏を聞いたときのことです。フィリピンの合唱作品と言えばカヤビャブなど一部の作品しか馴染みがありませんでしたが、その重厚で壮麗な曲調に、こんなに素晴らしい合唱曲がフィリピンで歌われているのかと驚きを隠せませんでした。どんな作曲家なのかもっと知りたい、彼の作品を歌ってみたいと手を尽くしたところ、程なく本人と連絡が取れ、コミュニケーションができるようになりました。
彼と親交を重ねるうちに、フィリピンのことを深く知ることとなりました。
フィリピンは17世紀にマゼランによりヨーロッパ世界に発見されて以来、300年以上にわたり、宗主国のスペインの影響を受けたアジア屈指のキリスト教国です。日本が鎖国により閉ざされていた間にも、マニラなどに建立された教会により教会音楽が営々と歌われていたことになります。しかし19世紀末に一旦スペインからの独立を果たしたものの、1898年にはアメリカ、1942年には日本の植民地となるなど、不遇の時代が続きました。
そして、私たち日本人が決して忘れてならないのは、フィリピンは太平洋戦争中の最大の激戦地であったということです。旧日本軍が撤退の末路を辿るなかで、この美しい島国には痛々しい傷跡が残され、大航海時代の栄華を映していた歴史的建造物のほとんどが破壊されました。日本人は50万人もの尊い命を失いましたが、フィリピンの人々も数十万人の人々が犠牲になりました。
パミントゥアン氏の作品に息づいている、ときに強烈とも感じるPassionには、フィリピンの人々の求憐の祈りと、平和へのひたすらな願いが込められていると感じます。また、国が破壊し尽くされても、素晴らしい音楽が引き継がれている奇跡には、深い感動を覚えます。
この度、パナムジカより、彼の作品の楽譜が日本で入手できる運びとなりました。是非、日本でも少しでも多くの団体により演奏されることを彼の一ファンとして願っています。近々にもCDが入手予定とのこと、是非楽しみにしてください。
なお、来る8月30日(日)(開演15時)、兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センターで開催される「混声合唱団はもーるKOBE 第30回記念コンサート」において、フィリピンからパミントゥアン氏を招き、今回楽譜が発売される作品のうち Pater Noster と Memorare、そして De Profundis (未出版)の3曲を日本初演の予定です。あわせて、彼が今回の演奏会のために書き下した Ave VerumCorpus(未出版)を世界初演致します。皆さまのご来場をお待ちしています。(お問合先:濱田 0798-72-8668)。
フィリピン・マニラ市内の公園に、1945年3月のマニラ戦での戦争犠牲者の碑があります。1ヶ月にわたる日米の壮絶な市街戦により、「東洋の真珠」「南洋の楽園」と称された美しい街は、術もなく灰燼と化しました。巻き込まれて亡くなったマニラ市民は約10万人。その直後にあった東京大空襲や沖縄決戦による、おびただしい日本人(民間人)犠牲者数に相当します。
その碑には「Memorare(忘れないでください)」との文字が彫られ、今でも私たちに問いかけています。
今回の演奏が日比友好の架け橋となり、世界平和の実現に少しでもつなげることができればと願ってやみません。
(混声合唱団はもーるKOBE 指揮者 岸本雅弘)
はもーるKOBE WEBサイト→http://hamoru.sakura.ne.jp/
●タイトル 「Pater noster (Maior caritas Op.5-1)」
作曲者 PAMINTUAN, John August(フィリピン 1972〜)
出版社 Astrum Music Publications
パナムジカコード GP1450A
声部 SATB div.
伴奏 無伴奏
言語 ラテン語
時間 4分
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